盗聴という、他人のプライバシーに立ち入る行為は、盗聴される側の立場からすると、気味が悪く恐ろしいものです。
しかし、中にはやましい目的だけではなく、企業の内部告発や配偶者の不倫調査など、相手の不当な行為を明らかにするための手段として盗聴器が使われることもあり、盗聴器の販売サイトや盗聴器の使用に関するネット情報を目にしたことがある方も多いかと思います。
そこでよく浮上する疑問が、「盗聴器を設置することは犯罪ではないのか?」ということです。
実は、盗聴器を設置し盗聴するという行為自体は、現在の日本の法律では犯罪にはなりません。
ただし、盗聴器を設置する場所や設置の仕方次第では、付属的にさまざまな犯罪行為に該当する可能性があります。
どのような犯罪に該当するか、それぞれのケースごとに例を挙げてみます。
盗聴器を仕掛けるため他人の住居やその敷地へ許可なく侵入した場合は「住居侵入罪」に該当します。
住人の許可を得ていた場合でも、盗聴器を設置する目的で住人を騙して住居に上がったという場合は、住居侵入罪に問われる可能性があります。
住居侵入罪で有罪になった場合、3年以下の懲役刑か10万円以下の罰金刑に処されます。
有線電話(固定電話)の回線に盗聴器を仕掛けた場合は「有線電気通信法違反」となります。
固定電話の回線に盗聴器を設置して電話の内容を盗聴した場合、2年以下の懲役刑か50万円以下の罰金刑に処されます。
また、固定電話を一部解体して盗聴器を仕掛けた結果、その他通信に何らかの妨害を生じさせた場合は、5年以下の懲役刑か100万円以下の罰金刑に処されます。
「器物損壊罪」になるケース
盗聴器を設置するために、他人の住居の鍵をこじ開けて壊したり、家電を一部改造するなど、他人の所有物を損壊させたた場合は「器物損壊罪」に該当します。
器物損壊罪で有罪になった場合、3年以下の懲役刑か30万円以下の罰金刑、もしくは科料に処されます。
盗聴器を仕掛けることで該当し得る犯罪の例をご紹介しましたが、これらに該当せず、単に盗聴器を設置した、盗聴したというだけでは、犯罪として罪に問われることがありません。
その理由は、一般の人でも盗聴器から発信されている電波を傍受することができ、盗聴の内容を知ることが出来てしまうためです。 これを犯罪とするなら、盗聴器の発見対策を行う盗聴器発見業者や、たまたま他人の通信を傍受した個人が犯罪者となってしまいます。
盗聴を行った犯人を、盗聴したというだけで逮捕することはできませんが、住居侵入や器物損壊の証拠、その他付属する犯罪の証拠があれば、警察が犯人を逮捕することができます。
また、これらの犯罪行為には該当せず、刑事責任を問えない場合でも、プライバシーの侵害として、盗聴器を設置した者に対し、慰謝料請求など民事的な処置をとれる場合もあります。
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